響きを重視した音律へー純正律

中世になるとピタゴラス音律の基準となった完全5度以外 にも響きの良い組み合わせがあることがわかってきました。

完全1度振動比が1:1(同じ音)
完全8度振動比が1:2(1オクターブ上の音)
完全5度振動比が2:3(ド:ソ)
完全4度振動比が3:4(ド:ファ)
長3度振動比が4:5(ド:ミ)
短3度振動比が5:6(ド:ミ♭)
長6度振動比が3:5(ド:ラ)
短6度振動比が5:8(ド:ラ♭)

これらの組み合わせによる響きの良さは不協和曲線(下のグラフ)によって明らかにされています。これを見ると1/1(完全1度)の次は6/5(短3度)、5/4(長3度)、4/3(完全4度)、3/2(完全5度)、5/3(長6度)、2/1(完全8度)となっていることが判ります。

不協和曲線

これらの組み合わせを元に作られた音律が1オクターブを整数比によって分割する「純正律」です。

音名度数1回目2回目3回目4回目まとめ
C完全1度1/11/1
C#15/32X215/16
D4/9X28/9X1/18/9
D#短3度5/65/6
E長3度4/54/5
F完全4度3/43/4X1/13/4
F#8/9X4/532/45
G完全5度2/32/3X1/12/3
G#短6度5/85/8
A長6度3/53/5
A#2/3X5/65/9
B2/3X4/58/15
C完全8度1/21/2
C#3/4X5/815/32
D2/3X2/34/9

まず、Cを基準としてC,D#,E,F,G,G#,A,Cが決まります(1回目)。次にGを基準としてA#,B,Dが決まります(2回目)。続いてDを基準としてF#が決まります(3回目)。最後にFを基準としてC#が決まります(4回目)。

音名まとめ弦長振動数振動比
C1/11.0001.000-
C#15/160.9381.0671.067
D8/90.8891.1251.055
D#5/60.8331.2001.067
E4/50.8001.2501.042
F3/40.7501.3331.067
F#32/450.7111.4061.055
E4/50.8001.2501.042
F3/40.7501.3331.067
F#32/450.7111.4061.055
G2/30.6671.5001.067
G#5/80.6251.6001.067
A3/50.6001.6671.042
A#5/90.5561.8001.080
B8/150.5331.8751.042
C1/20.5002.0001.067
C#15/320.4692.1331.067
D4/90.4442.2501.055

振動数比が一定になっていないため、転調がうまくできないことが判ります。それでは和音はどうなっているのでしょうか。

音名弦長振動数Ⅰ(C/E/G)Ⅳ(F/A/C)Ⅴ(G/B/D)
C1/11/11/1X4=4
D8/99/8
E4/55/45/4X4=5
F3/44/34/3X3=4
G2/33/23/2X4=63/2X8/3=4
A3/55/35/3X3=5
B8/1515/815/8X8/3=5
C1/22/12/1X3=6
D4/99/49/4X8/3=6

主要三和音全ての周波数比が4:5:6となっており、純正律が和音を重視して作られていることが判ります。